えーこのドラマ記録

趣味の海外ドラマ(たまに日本ドラマ)のネタバレと感想を綴るブログ。最近は中国ドラマにどっぷりハマっているので中国ドラマ記事が多め。

小説でここまで音楽を表現できるのか…「蜜蜂と遠雷」感想

小学生の頃から読書が大好きで趣味は読書だと言っていましたが、就職してからはあまり読まなくなってしまって早XX年。就職してからも読書は続けていましたが、どちらかと言うとビジネス本や仕事の本がメイン。子どもが産まれてからは読書からも遠ざかってしまい、1年に数冊読むかといった程度…第2子の産休に無事入り、時間ができた&こんなにゆっくりできる休みも最後だと思って、趣味のドラマ鑑賞と読書をしようと手に取ったのが昔から大好きな作家の恩田陸さんの本、「蜜蜂と遠雷」。この本は2017年(平成29年)、第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞して大きな話題となりました。直木賞本屋大賞のダブル受賞及び同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初だそうで。私が恩田陸さんの本を読み始めた小学生の頃から比べると恩田陸さんをご存知の方が増えてとても嬉しい限りです。(歳がバレるかな…)この本、ハードカバーで507ページ、しかも2段組みといった構成で、読み始める前は「こんな量読みきれるのか…」と今まで仕事・家事・育児でバタバタしてる中でいかに効率よく本を読めるか、みたいなことを考えて本を読んでいた私にとってはハードルが高く感じられる本でした。

ただ、そんなのは杞憂に終わりました。数ページ読み始めてすぐ、恩田陸さんの世界にすっと入っていけて、あっという間に恩田陸さん独特の世界に引き込まれてしまいました。恩田陸さんの本は全部ではないもののあらかた読んでいる私としては、恩田陸さんの世界観が懐かしく、直木賞本屋大賞を受賞した本だからおもしろいんだろうといったことは抜きにその世界にのめり込みました。

どんな物語か事前情報なしに読み始めた私。詳しくは後述のあらすじパート(といってもウイキペディアのコピーですが(^^;;)をご覧いただければと思いますが、この物語はとあるピアノ国際コンクールを舞台に繰り広げられます。物語のテイストは恩田陸さんの「夜のピクニック」に近いですかね。恩田陸さんは現実なのかファンタジーなのかわからない独特の舞台を元にした作品も多いのですが、この本はそうではありません。(私はどちらかと言うとファンタジーテイストの恩田陸さんの作品に惚れてます。) 大衆向けの作品だなぁと思うものの、作品の端々に恩田陸さんのファンタジーテイストが感じられるすばらしい作品です。前置きが長くなってしまいましたが、興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。この後ネタバレ含む感想を書きますので興味を持った方は戻ってくださいね〜。あ、読む時の注意点を1つだけ。後ろからは絶対めくらない方がいいです!何の気なしに読んでいる途中で後ろからめくったらコンクールの結果が載っていた…

あ、この小説を読んで思い出したのが「のだめカンタービレ」。物語としてはテイストも違いますが、方向性は似ているなぁと思いました。(私はドラマ鑑賞→漫画読破しました。)この小説を読んでみてまだ「のだめカンタービレ」をご覧になってない方はドラマか漫画を見てみてはいかがでしょうか。といっても「のだめカンタービレ」はギャグテイスト強いですが(^^;;。

目次

あらすじ

3年ごとの芳ヶ江国際ピアノコンクールは今年で6回目だが、優勝者が後に著名コンクールで優勝することが続き近年評価が高い。特に前回に、紙面だけでは分からないと初回から設けられた書類選考落選者オーディションで、参加した出場者がダークホース的に受賞し、翌年には世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝したため、今回は大変な注目を集めていた。だが、オーディションの5カ国のうちパリ会場では、「不良」の悪名の審査員3人は凡庸な演奏を聴き続け、飽きて来ていた。だがそこへ、これまでにない今年逝去の伝説的な音楽家ホフマンの推薦状で、「劇薬で、音楽人を試すギフトか災厄だ」と、現れた少年、風間塵は、破壊的な演奏で衝撃と反発を与える。議論の末、オーディションに合格する。

そして日本の芳ヶ江市での2週間に亘るコンクールへ。塵は師匠の故ホフマン先生と「音を外へ連れ出す」と約束をしていて、自分では、その意味がわからず、栄伝亜夜に協力を頼む。亜矢は塵の演奏を聴いていると、普通は音楽は自然から音を取り入れるのに、彼は逆に奏でる音を自然に還していると思った。マサルは子供のころピアノに出会わせてくれたアーちゃん(亜夜)を出場演奏者に見つけ再会する。3人の天才と年長の高島明石のピアニストたちが、音楽の孤独と、競争、友愛に、さまざまに絡み、悩みつつ、コンクールの1次2次から3次予選そして本選へ、優勝へと挑戦し、成長して、新たな音楽と人生の地平を開く。
蜜蜂と遠雷 - Wikipedia

感想(ネタバレあり)

この作品はコンクールの結果をドキドキハラハラ楽しむ側面もあるが、私としてはその音楽が持つ世界観を実際にその曲が聴こえるわけではないのに感じられるところではないかと思う。私は楽器も弾かないし、この作品に出てきた曲で曲名を聞いただけで頭の中に曲が流れるのはほんの数曲しかなかった。でもそんな私でもその世界観を感じられる表現をしている恩田陸さんはすごいなと思った。(実際に音楽を生業にしている人からどう感じるのかはわからないけれども。)そしてその恩田陸さんの文章の表現でこうも泣いてしまいそうになるものなのか、といったところが数カ所あった。実際に号泣するほどではないが、胸にじーんと込み上げてくる”なにか”を感じずにはいられなかった。途中で本を後ろからめくってしまってコンクールの結果を知った私だけども、結果なんてどうでもいい、この作品、そしてこの作品の文章に出会えたことがすばらしいと感じた。ワクワク・ドキドキとは違う心がじーんとする作品。感動ともまた違う、文章力に乏しいので表現できないが、とにかく「じわーっと泣きたくなる」気持ちが喚起される作品。

特に風間塵に引っ張られて成長する栄伝亜夜。彼女はとっても応援したくなる人物だった。マーくんの天才+努力家な部分は伝わったけど、やっぱりそういう優等生タイプではなくて、破天荒な天才である風間塵やそれに引っ張られる別の天才の栄伝亜夜は魅力的だった。風間塵の演奏にいたっては本当に聴いてみたくなる。(無論無理なのはわかっているけども…)コンクールの結果として1位にはなれなかった天才2人だが、そういった天才肌の魅力がたっぷり表現されてて読む人に愛されるようになっているなぁと思った。そして2次予選で敗退してしまったけども、最年長28歳の高島明石も魅力的だった。音楽家で食べていくことはできないことはわかっていても、音楽に引き寄せられてしまう本当に音楽が「好き」な気持ちがとても居心地よかった。私よりも年下な高島明石だが、やはり年齢が近いせいか現実と夢の狭間で動く心情がとっても理解できた。そしてそれでも夢としての音楽家を捨てられない彼のその一途さがうらやましくもあった。私には彼のようなものがあるのだろうか、と。ないな、と。ただ読んで私も昔持っていたであろうその「なにか」をまた探してみたいなと思った。別に今からでも遅くはないのだから、と、物語の中の高島明石と同じことを思ってしまった。

そしてこの小説、2段組で500ページ超だから一気に読むのが難しい。(特に私は読むのが非常に遅い。名探偵コナンの漫画を1冊読むのに1時間掛かる…)でも不思議なのは読むのを途中でやめてもまた開いた時にすっとまたその物語の中に入り込めた。本を閉じてその世界観に引っ張られることはあっても、すぐ続きを読みたくてどうしようもない!というよりは、またあの物語の世界に戻るけど急がなくても待っていてくれる、ゆっくりでも大丈夫だと思わせる不思議なものがあった。私はネタバレを先に読んでしまうようなせっかちな性格だが、この物語は(意図せずしてコンクールの結果を知ったけども)そんなことはどうでもよい世界を醸し出していた。躊躇している人も数ページでよいのでぜひ読んでみてほしいと思う。私の好きな恩田陸さんのファンタジーチックな作品ではないが、それでも恩田陸さんのすばらしさが溢れたじーんとくる作品で、すばらしかったなと思う。

久しぶりに小説を読んでやっぱり小説はいいな、と思った次第。忙しくて読むのが億劫と思うこの感覚、産休・育休中に直してまたいい物語に出会いたいなと思った作品でした。

余談ですが、もしドラマ化!とかになったら音楽の部分を表現するのが大変だろうな〜と思う作品。 賞も取った話題作なのでドラマ化してもおかしくないのですが、気をつけないと世界観を壊すので、もしドラマ化するのであればこの世界観を崩して欲しくないなーと思います。

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